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やり投げ理論が投球を変える! カープ投手陣が実践した「垂直方向の力」と「物体を空間に残す」トレーニング

近年、プロ野球のトレーニングにおいて「やり投げ」が注目を集めています。やり投げは全身の筋力やバランス、柔軟性を効果的に鍛えられるため、投球動作に必要な身体の使い方と共通点が多いといわれています。実際に、野球界でもやり投げトレーニングを積極的に取り入れるチームが増えているようです。

参考記事:
プロ野球の投手の伸びしろは「恐ろしいものが…」 やり投げ選手が驚くフィジカル潜在能力
侍ジャパン投手陣を支える「やり投げトレ」 山本由伸らがフォームの確認などのために愛用/WBC
今回のトレーニングでは、投球動作における力の使い方や身体の連動を深く掘り下げ、やり投げの理論を形式的な手法に落とし込みました。選手たちは「垂直方向への力」や「物体を空間に残す」といった重要なコンセプトを意識し、身につけた技術をトレーニングを通じて実践しました。
道上氏による指導のもと、選手一人ひとりがどのようにしてこの理論を取り入れ、投球に生かしたのか、その詳細に迫ります。

そこで今回、カープの選手を対象に「やり投げ」のエッセンスを取り入れたトレーニングを実施しました。テーマは「力の方向」と「物体を空間に残す」の2つ。全身を効率よく使って投げるための動作づくりや、具体的なメニュー、選手の声などを交えながら、そのポイントを詳しくご紹介していきます。

道上 雅晃 プロフィール

大手ジムに入社後、わずか1年未満でトレーナー上級ランクに合格。
その後5年間にわたり、一般の方からアスリートまで幅広く指導に携わる。
自身はやり投げ選手としても活躍し、

  • 社会人時代:全日本実業団4位
  • 大学生時代:日本学生個人選手権大会3位
  • 高校生時代:インターハイ5位
    という好成績を収める。

さらに、プロ野球選手の自主トレにも参加し、トレーナーとしての実績を積んできた。
現在は瀬戸内ローズフィールドを拠点に活動中。

参加カープ選手一覧

39長谷部 銀次

21中崎 翔太

36塹江 敦哉

121名原 典彦

34高橋 昂也

29ケムナ 誠

46河野 佳

トレーニング詳細

今回のトレーニングは「力の方向」・「物体を空間に残す」をテーマに実施。

【力の方向】
まず我々は地球で生きていく上で「重力」と付き合わなければなりません。そしてこの重力を活用して得られる力を「床反力」と呼びます。
床反力についての説明は割愛させていただきます。
床反力は垂直方向だけでなく、水平方向にも存在します。
しかし「重力」が垂直方向の力であることから、まずは水平方向よりも「垂直方向」の動作を身につけることが最優先と私は考えています。

重力に抗う(抗重力)動作が正確にできない状態で水平方向への動作を行ったとしても非常に運動効率が悪く、怪我のリスクも高まるからです。
これはスポーツだけでなく日常生活においても同様と考えています。

SNSも流行し簡単に情報収集できてしまうことにより、色々なトレーニングが目に入ると思いますが、最初に申し上げた通り運動においての基本は「垂直方向への力」すなわち抗重力であることを忘れてはいけません。

「垂直方向への力」のトレーニング

そして今回私は垂直方向への力を意識していただく為に、3つのウエイトトレーニングの種目を紹介させていただきました。

①プッシュプレス

②ダンベル片手スナッチ

③バックジャーク

この3種目はどれも垂直方向への動作になり、全身を使ったトレーニングになります。
いわゆる「瞬発系」と呼ばれる種目になります。

選手の皆様のトレーニング計画もあるので、今回はあくまで3種目を紹介させていただきました。

ここまでが「垂直方向への力」のトレーニングになります。

「水平方向への力」のトレーニング

ここからは「水平方向への力」のトレーニングについて説明させていただきます。

垂直方向への力の伝え方、身体の使い方をある程度身体に染みつけさせた後は、それを「水平方向」に転換するトレーニングを行います。

今回はメディシンボールを使ったトレーニングを実施しました。

①フロント、バック投げ

このトレーニングは前方方向、後方への力の伝達が重要になってきます。
メディシンボールのトレーニングでは他にも色々と実施しましたが、それは次で説明する「物体を空間に残す」の項目で説明させて頂きます。

【物体を空間に残す】

物を投げる上で「身体の開き」、「腕投げ」といったパフォーマンスを下げてしまう動作が多く存在します。

これらは末端で物体を操作しようとしていることが原因なのではないかと私は考えています。
いわゆる「全身を使って投げる」ということができていない状態を指します。

ここで不思議なのが、ウェイトトレーニングでは全身を使って大きく動く意識ができているのに、投げる動作になるとそれができなくなるといったことが多々あります。

では、何故そうなってしまうのでしょうか?
私は「物体が小さい」、「重量が軽い」ことが要因であると考えています。

・物体が小さい → 手先で操作可能
・重量が軽い → 全身を使わなくても操作できてしまう

上記のような理由で「全身を使って投げる」ということが難しくなっているのではないかと感じます。

そして、これを解決する意識の1つとして「物体を空間に残す」ことが挙げられます。

やり投げはブロック動作(踏み込み足が接地した局面)の瞬間に、槍が後方に残っていなければ飛距離は伸びません。
槍が後方に残っているという事は、腕だけで操作せず「物体が空間に残っている」状態を意味します。

空間に物体を残すということは、リリース局面までの間で力を伝える距離が長くなり、結果的に全身が使われることになります。

全身を使う→「身体の開き」、「腕投げ」といった負の動作を改善することが可能になります。

そして今回「物体を空間に残す」ことを狙いとしたメディシンボールのトレーニングをいくつか紹介しました。

①バランスボールを利用した近距離での壁当て
②バランスボールを利用した飛距離を狙った投げ
③歩き投げ
④バンドアシストでの歩き投げ
⑤スネークモーション投げ
※どれも両手で実施

これらの種目は腕(末端)で操作しようとすると顕著にメディシンボールの勢いが低下します。
逆に、全身を使って投げる事ができた際には目視で気づくほど勢いが増加します。
選手の皆様も最初は腕で操作する方が多かったですが、徐々に全身が使えるようになり勢いが増す選手がほとんどでした。

こうして視覚(速度)や聴覚(壁に当たった音の大きさ)で全身が使えたかそうでないかがわかるので、メディシンボールは非常に効果的なトレーニングと考えています。
そしてその「全身を使う」ことの条件として「物体を空間に残す」ことが必須になります。

注意していただきたいのが、「物体を空間に残す」ことを目的として
「自ら残す意識をする」といったことは避けていただきたいです。
自らの意識ではなく、あくまで「結果的に」物体が空間に残っている状態が望ましいです。

自ら意識する=操作をしてしまうということですから、それではパフォーマンスの妨げとなってしまう可能性があります。

「全身を使う」ことを目的とした手段として「物体を後方に残す」という位置付けで意識していただけたらと思います。

トレーニングを受けた感想をいただきました

・普段ウェイトトレーニングやファンクショナルトレーニングをする事があっても、力の方向をここまで意識して行った事がなかったので、非常に参考になった。

・垂直方向という簡単な動作でも自分は正確にできないものなんだなと改めて気づいた。

・道上さんは楽にスピード出しているのに対して、自分は頑張ってる感があった。力の伝達ができていないんだとすぐにわかった。

・物体を空間に残すというイメージがすごく自分に刺さった。
その後のキャッチボールで意識したところ、いつも以上に身体を使って投げる事ができたので、これからも続けていきたい

・野球ボールは投げられるのにメディシンボールになった途 途端、腕だけで投げようとしてしまったのでまだ全身を使う意識が出来ていないんだと感じた

まとめ

今回のトレーニングでは、まず「垂直方向への力(抗重力)」を正確に伝達できるようになることが大前提だという点を重視し、その上で「水平方向への力」へと発展させる流れが紹介されました。具体的には、プッシュプレスやダンベル片手スナッチ、バックジャークなど全身を使う“瞬発系”のウエイトトレーニングで垂直方向への身体操作を習得し、それをメディシンボールを使った前方・後方投げなどで水平方向に応用していくという構成です。
さらに、槍投げのフォームで重要となる「物体を空間に残す」という考え方が、野球など他の競技においても身体をしなやかに使い、大きな力を伝えるうえで大きなヒントになることが示されました。実際にメディシンボールを投げる際、末端(腕だけ)で操作しようとすると勢いが落ちる一方、全身を連動させて投げると目に見えるほどボールのスピードや音が変わる、という変化を選手たちが実感しています。このように“結果として”ボール(物体)が後方・空間に残ることで、より効率的に力を伝える動作が身に付くわけです。

選手からも「これまで何気なく行っていたトレーニングに垂直方向・水平方向といった力の向きを意識することで、動きが大きく変わった」「メディシンボールでの投げ方が変わると、その後のキャッチボールでも全身を使った投球がしやすくなった」といった声が寄せられ、トレーニングの効果を実感していただけました。

「やり投げ」がもたらす“物体を空間に残す”意識と、重力に対抗して全身を使う動作は、投球動作をはじめとしたあらゆるスポーツパフォーマンスの向上に通じるエッセンスがあります。今後も引き続き、このコンセプトを踏まえながらさまざまな練習法を取り入れていくことで、選手一人ひとりの可能性を最大限引き出すことができるでしょう。


トレーニングにご興味のある方は、ぜひ「ローズフィールド」までお問い合わせください。
さらなるパフォーマンスアップや怪我予防のための効果的なメソッドをご提案させていただきます。

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