企業における職業病のリスクは、従業員の健康と企業の生産性に大きな影響を与える重要な課題です。職業病は業務による身体的・精神的な負荷が原因で発生する健康問題を指しますが、その影響は見逃されがちです。本記事では、職業病の具体的な事例とその影響、企業が取るべき対策について説明し、理学療法士の役割を紹介します。
また現在エイジフレンドリー補助金を活用することができますので、ぜひ最後まで見ていただければと思います。
目次
職業病の具体的な事例
事例1:オフィスワーカーの腰痛
オフィスワーカーの中には、長時間のデスクワークによる腰痛に悩まされる人が少なくありません。ある企業では、従業員の約30%が腰痛を訴えていました。原因としては、長時間同じ姿勢を続けることや、適切な姿勢で座っていないことが挙げられます。この企業では、腰痛が原因で欠勤や生産性の低下が発生し、年間で数百万円のコストがかかっていました。
さらに、腰痛が悪化して椎間板ヘルニアに発展するケースもありました。ヘルニアを発症した従業員の中には、長期間の療養を余儀なくされることもありました。一例として、ある従業員はヘルニアの手術後も痛みが残り、最終的には退職に至りました。退職した従業員の穴を埋めるために新たな人材を募集するも、求人難の状況が続き、企業の生産性に深刻な影響を及ぼしました。
事例2:工場作業員の腱鞘炎
工場作業員の中には、同じ動作を繰り返すことで腱鞘炎を発症するケースが多く見られます。腱鞘炎による休職や治療費が企業にとって大きな負担となり、生産ラインの遅延にも繋がりました。
特に、腱鞘炎が慢性化して作業能力が低下し、最終的には他の職種への転向を余儀なくされる従業員もいました。企業は、熟練した作業員を失うことによる技術継承の問題や、新たな人材育成にかかるコストを負担することとなり、経済的なダメージが大きくなりました。
事例3:介護職員の腰痛
介護職員の中には、患者の移動や体位変換といった肉体労働により、腰痛を発症するケースが多く見られます。ある介護施設では、従業員の40%が腰痛を訴えており、そのうちの15%が椎間板ヘルニアを発症していました。ヘルニアにより長期間の休職を余儀なくされる従業員も多く、さらに一部の職員は腰痛が原因で退職に至るケースも見られました。退職に伴う新たな人材の採用と育成にかかるコストや、慢性的な求人難が施設運営に大きな負担をかけていました。
事例4:配送ドライバーの腰痛と膝痛
配送ドライバーの中には、長時間の運転と荷物の持ち運びにより、腰痛や膝痛を発症する人が多くいます。ある物流会社では、従業員の25%が腰痛を訴え、10%が膝痛を経験していました。これにより、従業員の欠勤が増え、配送の遅延やサービス品質の低下が発生しました。
事例5:製造業の溶接工の視覚障害
溶接工の中には、長時間の作業によって視覚障害を発症するケースがあります。ある企業では、従業員の10%が視覚に問題を抱えており、そのうちの3%が重度の視覚障害を訴えていました。視覚障害により、作業効率が低下し、品質管理の問題が発生しました。
事例6:倉庫作業員の筋骨格系障害
倉庫作業員の中には、重い物を持ち上げる作業や繰り返しの動作によって筋骨格系障害を発症するケースが多く見られます。ある企業では、従業員の35%が肩や腰の痛みを訴えており、そのうちの15%が長期的な治療を必要としていました。これにより、欠勤や生産性の低下が発生し、企業の運営に支障をきたしていました。
職業病の影響
職業病は従業員の健康に直接的な影響を与えるだけでなく、企業全体にも多大な影響を及ぼします。以下は主な影響です。
生産性の低下
職業病を抱える従業員は、痛みや不快感のために仕事に集中できず、生産性が低下します。欠勤や遅刻が増えることもあり、業務の進行に支障をきたします。
医療費の増加
職業病による治療費やリハビリ費用は、企業にとって大きな経済的負担となります。また、従業員が病気を理由に長期休暇を取る場合、代替要員の採用やトレーニングにも追加コストが発生します。
従業員の士気低下
職業病に苦しむ従業員は、仕事に対するモチベーションが低下し、結果的に職場全体の士気にも悪影響を与えます。健康な職場環境が提供されない場合、離職率の上昇にも繋がります。
企業が取るべき対策
職業病のリスクを低減するために、企業は積極的に対策を講じる必要があります。以下にいくつかの具体的な対策を紹介します。
作業環境の改善
従業員が快適に作業できる環境を整えることが重要です。
例えば、座った姿勢が猫背や反り腰の場合のデスクワークでは、首や腰に過度な負担がかかる為、腰痛や肩こりの原因となり作業効率も低下してきます。更に重症化するとヘルニアや脊柱管狭窄症となり痛みや痺れなどの症状がみられ、最悪の場合手術適応となる事もあります。
その為、身長や座高などから適切な椅子の高さ・デスクの高さを計算し、エルゴノミクスに基づいたデスクや椅子の導入、PCの高さ調整、適切な照明の配置、定期的な休憩・ストレッチ・運動の推奨などが効果的です。
健康教育の実施
従業員に対して職業病のリスクや予防方法に関する教育を行うことで、自身の健康管理に対する意識を高めることができます。ストレッチや正しい姿勢の指導、健康診断の定期実施も重要です。
定期的な健康チェック
従業員の健康状態を定期的にチェックし、早期に異常を発見することが大切です。健康診断の結果を基に、必要な治療や対策を迅速に行うことで、職業病の発生を未然に防ぐことができます。
理学療法士の役割
理学療法士は、職業病の予防や治療において重要な役割を果たします。具体的には以下のような活動が挙げられます。
個別のケア・トレーニング
理学療法士は、個々の従業員に対して適切なケア・トレーニングメニューを提供します。これにより、職業病の症状を軽減し、早期の職場復帰をサポートします。
職場環境の評価と改善提案
理学療法士は、職場環境を評価し、改善点を提案します。エルゴノミクスに基づいた設備の導入や作業方法の見直しなど、従業員の健康を守るための具体的なアドバイスを提供します。
健康教育とトレーニング
従業員に対して、職業病の予防や対策に関する教育を行います。ストレッチや運動の指導、健康管理の重要性についての啓発活動を通じて、従業員の健康意識を高めます。
エイジフレンドリー補助金の活用
職業病の予防と治療を進めるためには、企業にとって費用がかかることも事実です。しかし、エイジフレンドリー補助金を活用することで、企業の経済的負担を軽減しつつ、効果的な健康対策を講じることが可能です。エイジフレンドリー補助金は、高齢者を含む全ての従業員の健康を守るための取り組みを支援する制度です。
まとめ
職業病のリスクを見逃すことなく、従業員の健康を守るためには、企業が積極的に対策を講じることが不可欠です。作業環境の改善や健康教育の実施、定期的な健康チェックなどを通じて、職業病の発生を予防することができます。また、理学療法士の専門的な介入により、従業員の健康改善が図られ、生産性向上や企業価値の向上にも繋がります。企業としては、従業員の健康を守るための具体的な施策を導入し、健康な職場環境を提供することが重要です。
職業病の予防と治療に取り組むことで、従業員の満足度と生産性が向上し、結果的に企業の競争力も高まります。エイジフレンドリー補助金を活用し、理学療法士の専門知識を活用することで、従業員の健康を守るための対策を進めていきましょう。ぜひ弊社にご相談ください。
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